幕末明治の肖像写真
石黒 敬章

定価: ¥ 2,940
販売価格: ¥ 2,940
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発売日: 2009-02-10
発売元: 角川学芸出版
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激変の波間で生きた人々の顔(かんばせ)には情熱と至誠が感じられる
『幕末明治の肖像写真』の存在を4月24日付日経新聞の文化欄に載った編著者の記事で知って、眺めてみた。勿論、幕末の志士や維新の元勲の写真には関心があるが、個人的には幕府派遣のオランダ留学生(榎本武揚、西周、津田真道ら)や明治初期に派遣された女子留学生(津田梅子、永井繁子、山川捨松ら)の写真が特に興味深かった。
新政府に出仕した人物の多くが漢学や蘭学の素養が高く、加えてヘボンや中浜(ジョン)万次郎らに英語を習ってから渡欧渡米したことが判る。造船や鉄道、測量、医学などの学問領域を学んで相次いで帰国した若者たちは、新国家を担う人材として将来を嘱望されながら、三十歳代、四十歳代の若さで亡くなったり、異国で客死した人もいる。維新回天の成就という志半ばで非業に倒れた幕末志士とは違った意味で、また別の無念さを抱いたことだろう。
小説「エドの舞踏会」を読み終えた直後だったので、小説の登場人物を見つけては喜んだり、イメージとの違いに驚いたりした。日本人には稀な横顔の写真を撮っているのは森有礼。小西郷こと西郷従道はなんだか俳優の三船敏郎を思わせる風貌で写っている。鹿鳴館の華と謳われた捨松夫人とは不釣合いな夫の大山巌は、髭を生やしていない写真では童顔の腕白大将に見えるから可笑しい。
総じて明治期の軍人たちは、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争とほぼ十年間隔で大乱の修羅場を潜っている事実を再認識した。長谷川伸の労作「日本捕虜志」のレビューで触れた日本伝統の<サムライ心>は、彼等顕官の退役(引退)、死去に伴って薄らぎ消え行くこととなってしまったのだろう。
有名無名、官軍賊軍、官吏民間人の区別なく、時代激変の波間で生きた人々の顔(かんばせ)には、より良い明日の到来を信ずる情熱と至誠が感じられる気がした。
明治の元勲 時代を作った群像 知られざる肖像写真
標題の通り、幕末から明治にかけて活躍した人々の肖像写真を集めた本です。筆者の石黒敬章氏は、肖像写真のコレクターで、巻末に原典となる「写真収録アルバム」が掲載してありますが、これを集める努力に敬意を払いたいと思いますし、236ページにも記載がありましたが、肖像写真の本人特定の困難さを克服した努力にも頭が下がります。
教科書に使われている写真以外の肖像が多く、名前は知っていますが、初めて目にする人物との出会いは、歴史好きにはたまりません。有名な偉人はもとより、それ以外の人物についても掲載写真に簡単な略歴が記載してあり、生年没年(不詳の場合もあり)、よみがな、出典が書かれていますので、資料としてもしっかりとした利用ができます。200人、450点余の肖像写真というのは圧巻でした。
良く知られている人物として、福沢諭吉、榎本武揚、明治天皇、岩倉具視、三条実美、徳川慶喜、鍋島直正、山内容堂、佐久間象山、坂本龍馬、中岡慎太郎、高杉晋作、江藤新平、西郷隆盛、木戸孝允、大久保利通、勝海舟、黒田清隆、伊藤博文、井上馨、板垣退助、前島密、大隈重信、山形有朋、高橋是清、桂太郎、森有礼、陸奥宗光、青木周蔵、乃木希典、寺内正毅、東郷平八郎、岩崎弥太郎、五代友厚、松方正義、渋沢栄一、新島襄、川上音二郎、川上貞奴、津田梅子、北里柴三郎など、本書に掲載の人物を掲載順に拾い上げるだけで、近代史の教科書に登場する人物のほとんどの肖像写真と出会えるわけです。
写真のジャンル分けとして、遺欧使節、オランダ留学生、天皇・皇族・公家、将軍家・藩主、幕末・明治の動乱期を生きた人物群、明治政府の中枢にいた人物群、明治の文化を担った人物群、となっています。
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