暗殺・伊藤博文 (ちくま新書)
上垣外 憲一

定価: ¥ 714
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発売日: 2000-10
発売元: 筑摩書房
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従来の伊藤博文観をくつがえす
江戸末期、明治維新から韓国併合までの、日本と朝鮮半島を舞台にした複雑極まりない政治史を「伊藤博文」を軸に記述した近代史の好著。朝鮮半島で日本人の悪玉といえば豊臣秀吉と伊藤博文が双璧である。無謀ないくさを起こし、両国に多大な犠牲と禍根を残し、弁解の余地すらない秀吉と違って、従来の悪玉として捉えるにはあまりにも複雑な外的事情な内面、そしてヤヌスの仮面をかぶった伊藤博文という存在の謎に迫っている。
伊藤は日露和平論を持っており、日露戦争でもロシアとの戦争を極力回避しようと懸命の努力を続け、戦争が避けられないと知るや、アメリカと交渉して戦争を終結させるための外交を展開した。戦争は辛勝におわり、多大な犠牲にも関らず賠償金も取れず樺太半分取れただけで国民を納得させうる「戦利品」がない伊藤が、自身の政治家としての保身の代償として「朝鮮」に目を付けざるを得なかった事情が克明に描かれている。一方、朝鮮の悲劇的な歴史に共感し、中国の民衆の潜在的能力を見抜く卓眼と良識を備えた人物でもあり、また西郷、大久保などの維新第一世代と違い、過激な民族主義者や軍の強行派を押さえ切る力のない第二世代としての限界も指摘している。また伊藤を暗殺したのが実際に安重根の弾丸なのかどうかということより、引退してもよい高齢でありながら近隣諸国との外交関係の為に、死の瞬間までなぜ伊藤は奔走するのか、その彼と対立し真に「死に至らしめた」の相手が何者なのかという視点でこの暗殺事件に迫っている。
日露戦争も伊藤博文も解釈が難しい。この本を読んでも謎は依然謎であるが少なくとも、従来のステレオタイプの伊藤観を脱し、複眼的思考で近代史を見る視座を与えくれる本だと思う。
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