岩倉具視―言葉の皮を剥きながら
永井 路子

定価: ¥ 1,600
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発売日: 2008-02
発売元: 文藝春秋
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読み物としては面白いけれど、やっぱり、もの足りない
小生らの世代にとって岩倉具視というと、まず「5百円札」で、あと、俳優「加山雄三」の曽祖父という感じかな。
明治6年の政変(じつのところは西郷・板垣・江藤連立政権不信任)、同14年の政変(大隈政権への不信任)における岩倉具視の役割をテーマから外したのは、やはり、作家としては逃げた感じがする。もっとも、こういうかたちで書いてしまうと、もう理屈が立たなくなってしまうのかも知れないが。
生身の人間として等身大の岩倉具視を描いたといえば当たってなくもないが、政治家は、時に応じ機に応じ、変わって当り前が真骨頂であり、政治家(革命家?)として幕末期の岩倉の成熟(変節?)過程を追うのなら、明治期、権力を握って、また変わった岩倉の実像も追って欲しかったね。やはり、その辺で一つの見方にはなっていても、政治家の評伝としては、「薄っぺら」という読後感が残ったのは否めない。
なお、本書によると、いまどき、まだ「孝明天皇毒殺説」を論じる歴史家(石井孝氏)が居るというのには呆れてしまった。どうも、歴史家さんは、歴史的事実展開に論理的因果関係をこじつけないと学問ではないような気になるらしいが、しかし、世の中にはフロックというのもあるわけで、瓢箪から出た駒のような偶然が、ものごとを突き動かしてしまった事例も少なくないのが歴史。まして政治というものが、ごく少数の手に握られていた王制時代には、政治家一人の生死が国の運命を左右してしまった事例など幾らでも見られた。孝明天皇の病状については詳細な記録が残っているので、いまさら話を面白くしようとしても、話題づくりにすぎない姿勢があざとく見られ、却って顰蹙を買うだけではないかと思うが、どうかねぇ。
著者が明快に否定している点は、その通りで「毒殺など、有り得ない」というしかない。
幕末はテロの時代
幕末物としてみた場合、あらためて幕末と言うのはテロの時代だと気づかされました.
また、それぞれの藩主の考え方を著者なりに提示され、地方分権が叫ばれている現状において
テロでものごとを決められない今の時代と比較し、これからの日本がどうなっていくのか
思いを巡らすことが出来ました.
今後、著者には市井の人々とか、庶民を深堀した時代の描写を期待したい。
もう一つの岩倉論
小説家の永井路子女史による岩倉論である。
以外や以外で、妄想で書くわけではない。かといってアカデミズムのように堅く書くわけではない。とはいえ、基礎文献と一次史料を読みこなした上で、永井史観ともいうべき結論に達するわけであるが、岩倉の政治生命が明治元年で終わったという見方については承服しがたい。
岩倉はこの後、朝権維持の為に、死の直前まで闘うのだが、永井女史には政治の表から去った岩倉に魅力を感じないのか?この部分は小説家の好みの問題であるから仕方ないのか。
それでも、岩倉にとって濡れ衣とも言うべき孝明天皇毒殺について、「岩倉が真犯人でないからこそ、歴史に悪名が残せなくて残念である」と皮肉って書いているのはご愛嬌。無論、悪意で書いているわけではなく、岩倉を真犯人呼ばわりした文筆家に対する毒舌である。明治維新研究家でもある石井孝氏も、紙上で永井女史に叩かれているのには苦笑してしまうが。
兎も角、永井女史による岩倉への愛情というか、そういったものをほのかに臭わせる本ではある。
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